私たちヒトを形作っているのは一つ一つの細胞であり、細胞は生命の最小単位です。細胞の中にはさまざまな細胞内小器官(オルガネラ)があり、外からタンパク質や脂質などを取り込んで分解したり、小胞体で合成したタンパク質などを細胞外へ分泌したりして、細胞はその生命活動を維持しています(図1)。

図1;細胞内には小胞体、ゴルジ体、細胞膜、エンドソーム、リソソームなど、
   いろいろな細胞内小器官(オルガネラ)が存在し、タンパク質や脂質などが輸送されている。

どのように特定のタンパク質や脂質だけが選別されて輸送されているのでしょうか?これまでわかっている積荷の選別機構は極めて精密なもので、積荷が正しければArfGAPというタンパク質の酵素活性が上がり、GTPの加水分解が行われ、正しくなければGTPの加水分解は起こらない、ということを利用して、正しい積荷だけ選別されるというものです。しかし、どのように、細胞は正しい積荷と正しくない積荷を区別できるのでしょうか。

当研究室では哺乳動物細胞を用いて、多数のオルガネラが交錯するポストゴルジにおける選別機構を解明しています。
ポストゴルジは生合成された宿主のタンパク質と、外から入ってくる病原体や栄養素などの異物が混ざりあうところです。ウィルスや病原体などは分解経路に輸送されるべきですが、病原体は巧みに分解を逃れ細胞内で増殖することも知られています。宿主タンパク質と外から入ってくる異物が、どのようなメカニズムで選別されているのか、明らかにしたいと考えています。

細胞内輸送の研究は生命の不思議を探る基礎研究ですが、輸送機構が壊れるとオルガネラの機能が阻害され、様々な疾患を引き起こすことから、医学の基礎研究としても重要な分野になっています。ポストゴルジの選別機構の解明は、がんや自然免疫の分野の理解に貢献します。また、輸送の研究をDrug Delivery System (DDS)の研究に発展させていきます。

当研究室では自ら興味を持ち、自ら考え、自ら行動できる人材を育成することを教育目標にしています。自分の疑問をとことん突き詰めてみましょう。
当研究室では留学生や多様なキャリアの方を受け入れています。それぞれ自分の仕事をしながら、多様な価値観を尊重して、みんなでdiscussionをしながら研究ができる、そういう人材を育成したいと思っています。一緒にサイエンスを学びましょう。